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2018年10月18日

熊野筆(広島県)

明日からスタートする「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2018」も今年で5年目を迎えます。THE COVER NIPPONの今回のコラボレーションは「熊野筆」です。そこで、広島県創業100年を超える歴史と技、広島熊野筆の仿古堂(ほうこどう)をご訪問し、代表の井原倫子さんに工房やショップをご案内いただきながら、熊野筆について、いろいろお話をお聞きしました。

山深い熊野町は、広島市近郊ですが、四方を山に囲まれた盆地です。その静かな環境の中で熊野筆は作られています。
熊野筆の歴史は古く、広島県安芸郡熊野町では、江戸時代末期に広島藩の産業奨励もあり筆づくりの技が発展し、昭和50年(1975)に国の伝統的工芸品に指定され、その技術を生かした画筆や化粧筆など多様な筆が生産され、現在国内生産量の約80%を占めています。

仿古堂では、伝統工芸士の方を含め、様々な世代の女性の職人の方々が筆を丹念につくっています。産地全体としては後継者が少なくなっている中、女性が働きやすい環境を整えることで、職人の技術継承や育成にも力を入れています。
筆を作ると一言で言っても、70以上もの工程があり、今もなお手づくりで行っています。筆には様々な毛を使うことから、その毛の扱いに慣れるまでにも何年もかかり、毛に慣れてきたころにやっと、筆の穂首づくりを学びます。それほどに「毛を扱う」ことがとても大切で難しいこと。筆の材料には、馬・山羊・イタチ・リスなど様々な毛があり、それらを筆によって長さや組み合わせを変えてつくります。筆の用途や使い心地などを試しながら、ひとつひとつつくりあげていくのです。

筆のできるまで

現在その筆に使う原料の入手が難しくなってきているというお話をお聞きしました。
その大きな理由のひとつとして、地球の温暖化が影響しています。温暖化により、動物は上質であったかい毛が必要ではなくなるため、粗野な毛になっていること。もうひとつは、毛の産地である中国などでは、動物が若いうちからどんどん筆用の毛を刈り取ってしまうため、長く育った上質な毛が手に入りにくくなっていること。などが挙げられます。こうしたところにも、地球の温暖化が影響していたとは、改めて知りました。
熊野筆の産地に入る前に、ある染付の陶磁器産地に立ち寄ったのですが、その時に、上質な筆が手に入りにくくなり、繊細な染付を描くことが難しくなりつつある。という現状をお聞きしました。繊細な技術を持った職人も、それを購入したい消費者もいる中で、道具である「筆」がなくなってしまうことで、技術が継承できなくなってしまうことは、とても嘆かわしいことです。その想いを、お預かりした筆とともに、熊野筆の産地にお届けしました。

私たちはこうした「産地と産地を繫げること」も、大切な役割であるとともに、素晴らしい日本のモノづくりを知っていただくことで、これからの日本のモノづくりを継承していく「つなぎ手」であり、使い手の皆様への「つたえ手」にならなくては、とTHE COVER NIPPONの役割を改めて感じた、貴重な一日となりました。

さんちのおと

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